SECOND CAREER PROJECT
vol.1 株式会社伊藤園 金高 真大 編(元愛媛マンダリンパイレーツ)
四国アイランドリーグplus セカンドキャリアプロジェクトOB訪問
2021年から四国アイランドリーグplusの取組みとして、セカンドキャリアプロジェクトを開始しました。
プロジェクトの一環として、9月に全選手を対象とした企業説明会を開催。
企業説明会には、当プロジェクトに賛同いただいた企業にお集まりいただき、各社の事業説明をしていただきました。
事業内容に興味を持った選手と企業をおつなぎし、退団後の企業見学や面談を実施しました。
今回、このセカンドキャリアプロジェクトを経て、四国アイランドリーグplusのリーグオフィシャルパートナーである株式会社伊藤園に入社した金高真大さん(元愛媛マンダリンパイレーツ【以下 愛媛MP】)を取材しました。
愛媛MPから伊藤園へ
—— 伊藤園さんに入社して半年が経ちました(2021年12月入社)。半年働いてみて、どうですか。
仕事には大分慣れてきました。
入社した頃は右も左も分からなかったので…。
でも、今は一人で営業先をまわることもできるようになりました。
—— 主にどのような仕事をしていますか?
今は営業を担当しています。(伊藤園の商品を)自動販売機に補充するのが主な仕事で、あとは一般のお店にも商品を納品しています。その中でお客さまと会話をし、新規開拓もしています。
納品先は酒屋さんや薬局など。紙パックの商品なんかが置いてある、購買のようなところです。
12月から入社してちょうど半年、ある程度業務には慣れてきましたが、まだ分からないことも多いです。
—— まだまだ、これからの伸びしろに期待ですね!
アットホームな職場環境
—— (取材前に支店の皆さまにご挨拶をして)職場のみなさんがすごくアットホームな雰囲気で驚きました。支店長さんや他の社員さんも野球好きな方が多いですか?
そうですね、入社してすぐに野球の話をすることができました。
入社したときから皆さんが優しくて。前任の方から業務の引き継ぎを受けた際も、とても良くしていただき、色々と教えていただきました。
—— 金高さんは社内で若手ですか?
今年の4月から僕より1歳下の新入社員が入社したので、僕が2番目に若いです。
—— 期待のホープですね!(笑)
伊藤園へ入社した経緯、背景
—— 伊藤園さんに入社した経緯、背景を教えてください。
最初は自分で(就職先を)探していましたが、自分の受けた会社は中途採用がなく、落ちてしまいました。
そこで、退団してから1ヶ月程は経っていましたが、四国アイランドリーグplusの事務局に相談することにしました。
事務局からは数社紹介していただき、会社説明を聞きました。その中で、自分にとって伊藤園さんが一番良いなと感じたので、そのまま面接に進みました。
—— 面接ではどんなことを聞かれましたか?
野球のことがメインでした。
「野球で身に付けたことや努力したことはなんですか」「野球をしてきて成長した部分はどんなことですか」などですね。
あとは「野球をしてきて成長した部分を、伊藤園に入社したらどのように活かせますか」など聞かれました。
—— どのように回答しましたか?
野球ではコミュニケーション能力を培うことができたので、それを活かしていきたいと答えました。
—— 就職相談から入社まで、すごく早い印象でした。
11月下旬に会社説明を聞いて、自分の自己紹介プロフィールを送りました。
書類審査が通り、オンライン形式の一次面接をしました。
一次面接の合格をいただき、つぎに岡山支店で対面形式の二次面接をしました。それからすぐに合格をいただき、12/16に入社…です。
1ヶ月もかからずに入社できました。(笑)
選手時代を振り返って
—— 愛媛MPに入団したきっかけを教えてください。
もともとは社会人野球チームのテストを受けていて、「落ちたらもう野球は辞めよう」と親にも伝えていました。
結局、行きたいと思っていた社会人チームのテストには落ちてしまったのですが、親の知人が愛媛MPのコーチの方に繋がりがあって。
僕の知らないところで相談してくれていました…。
社会人チームのテストにも落ちたので、野球はもう辞めようと思っていたのですが…
—— 親御さんとしては野球を続けてもらいたかったんですね。(笑)
そうなんです。(笑)
それで愛媛のトライアウトを受けてみて、ダメだったら辞めます。と、ハッキリ伝えて、個別トライアウトに参加しました。
受験した結果、特別合格の通知をいただきました。せっかくならあと1年は頑張ろうと思い、入団を決めました。
—— 去年1年、主力として試合に出ていました。
そうですね。68試合のうち55試合に出場しました。
—— 9割程は出場していますね。尚更1年で退団というのは驚きました…。
選手同士で今後どうするか?という話にもなりましたが、僕はもう1年だけと決めていたので…。
止めてくれる仲間もいましたが、正直この先野球で食べていけるかと考えたら…。
早い判断ではありましたが、野球はもう辞めようと決めました。
—— しっかりと自分自身を客観的に見ることができているのですね。
選手時代に苦しかったこと、大変だったことを教えてください。
大変だったのは遠征です。
大学時代、遠征は泊まりでしたが、独立時代は日帰りで、次の日もまた同じ球場に行くというのが最初は大変でした。
でも、後半は慣れて来て、逆に楽しいと思うようになりました。(笑)
しんどい、しんどいと思っていても、面白くないなと思ったので。それを楽しまないといけないなと思いました。
—— 大変だったことも、次第に前向きに捉えられるようになったのですね!
ただ、野球ばかりやる環境や同じことをずっとしている時間が多いと、急に不安になる瞬間があるのではないかと思うのですが、そのあたりはどうでしたか?
僕にはそれはありませんでした。
元から1年と決めていたので、結果が出ようが出まいが自分の責任だし、この1年で終わると考えたら、1試合1試合で悔いを残したくなかったので。
—— 自責の念ですね。
野球漬けの毎日で、野球が嫌いになる瞬間はありませんでしたか?
自分を嫌いになるときはありました!(笑)
結果が出ないとき、打てないときに自分を嫌いになる瞬間はありました。
それでも野球を嫌いになる瞬間はありませんでした。
もう1年現役選手をしていたら、野球を嫌いになっていたのだろうなとは思いますが。(笑)
—— 程よいところで引退を決断したのですね。(笑)
今、野球はやっていますか?
今は中学校のクラブチームで指導者をしています。
あとは先日、会社の草野球に参加しました。
野球に真摯に向き合う中で、得られたもの
—— 野球を一生懸命やってきた中で、成長できたことはなんですか?
コミュニケーション力はすごく身についたと思います。
(キャッチャーをやっていて)会話をする機会が多く、特に愛媛MPは個性あふれる人がたくさんいて、コミュニケーション能力が鍛えられました。
—— 高卒の選手や大卒の選手、監督、コーチ、球団スタッフさんなど、普段はあまり関わることがない方々と会話することで、コミュニケーション能力が成長したのはとてもプラスなことですね。
はい、やはり人と会話することは大切だなと思います。
会社に入っても「独立リーグで野球していたの?」と聞かれて、「はい。そうです。」で終わったら、会話ではないですよね。
そこからどれだけ自分で話すことができるかが大切だと思うので、色々な人と会話する経験はとても大切でした。
—— 四国アイランドリーグplusで学んだことはなんですか?
僕自身も含めて、社会人野球に行けない人達が集まっていて、何が欠けているのかを探したことは、とても勉強になりました。
あとは人間関係で言えば、本当にプラスになりました。
先ほども話した通り、全く違うところから集まって、1年だったら1年の付き合いだし、僕が2年いたら2年の付き合いをする方もいる。そこで色々な人に出会えたのが、僕にとってはプラスでした。
野球ばかりしておけば良いという環境に見えますが、僕はそこで出会った縁を大切にした方が良いなと思います。
—— 欠けているところを探すのはキャッチャーらしい分析ですね。(笑)
あとは、アイランドリーグでしかない出会えない縁があったという事ですね。
そうです。
あとは環境での学びもありました。僕が仕事を始めて思ったのは、仕事をできる環境があるから働けるし、野球ができる環境があるから野球ができるということ。
愛媛だったり高知だったり徳島、香川であったり、誰かがいないと野球はできないのだなと感じました。
例えば愛媛だったら星企画(愛媛MPのオーナー会社)があって、自分が野球をやっている陰には必ず誰かがいるということを、選手を辞めてからではありますが感じました。
当たり前の環境があるわけではなくて、自分が野球をできている裏には必ず誰かがいると思いながらプレーしたほうが、感謝の気持ちも出ますし、挨拶ひとつにしても変わってくるのかなと思います。
—— 金高さんがこれから目指していきたいことを教えてください。
今は目指したいところはありませんが、伊藤園に入ることができたので、一生懸命働く中で考えたいです。
今後のことを考えると、今の仕事が疎かになりそうで。あまり器用な方ではないんです。(笑)
まずはスポンサーさんのところで働かせてもらっているので、目の前のことをしっかりやろうと思っています。
うちの看板商品が「お〜いお茶」、その次に「健康ミネラル麦茶」なので、この二品をもっと選手にアピールしてもらいたいなって思います。(笑)
後輩、四国アイランドリーグplusを目指す人たちへ
今プレーしている人達は、悔いなくやり切ってほしいなと思います。
途中で辞めることはせず、契約更新をした瞬間から契約更新が切れるまで、なにがあってもやり切ってほしいです。挫折は何回もあるとは思いますが、挫折してでもやり切ってほしいと思います。
また、もし挫折しても、良い仲間をつくってほしいです。
一人ぼっちで仲間もいないと、挫折したときにダメになる人もいると思いますが、仲間を作ることで、またやり直そうと思うこともできると思います。そうやって、チーム力も上がるのではないかなと思います。
今からアイランドリーグを目指す人は、覚悟を持つことで、野球に熱中できるのではないかと思います。
僕は入るときに「何年」って決めていたので。3年なら3年と決めて、それが2年になっても良いと思います。
良いお給料をもらえるわけでもないですし、そういう意味でも覚悟を持って入団した方が、僕は野球に熱中できるのかなと思います。
これは実際にやっていて感じたことです。
(文責:四国アイランドリーグplus)